インドネシアの薬局の店頭。シロップ薬による急性腎臓疾患の急増を受け、インドネシア保健当局は11月1日、製薬メーカー2社に対し、シロップ薬の製造・販売の停止処分を下した(写真:AP/アフロ)

 インドネシアで咳止めや解熱用のシロップ薬を飲んだ人が、急性腎臓疾患を発症して重篤な容体になり、その後、死亡に至った事例が今年8月頃から急増、これまでに少なくとも140人以上の命が奪われたという。飲みやすいシロップ薬だけに、犠牲者の大半は5歳以下の幼児や児童である。

 事態を重視したインドネシア政府は実態調査に乗り出し、犠牲者が服用したシロップに不認可の違法成分が混入していることを突き止めた。

 政府は当該シロップを薬局などから全面的に回収、さらに10月19日には5種類のシロップ薬の販売と処方を禁止した。

保健当局へも国民の怒りが

 国民の不信と怒りの矛先が向いているのは、シロップを製造した製薬会社だけではない。薬品の品質を検査・管理する政府機関や、正規のルートではない裏の流通を容認していた薬局など、薬品医療体制全般にも向いている。要するにインドネシア国内の医薬品行政全体に国民の不信の目が向けられている状態だ。

 それも当然だろう。露見している被害は氷山の一角に過ぎないかもしれないのだ。

 ブディ・グナディ・サディキン保健相は10月25日の時点で、「全国の26州で245件の症例が報告され143人が死亡した」としたが、同時に実際の症例はこの数字の約5倍に達する可能性があるとの見方を示した。