(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
バイデン政権への最初の審判とされる米国の中間選挙が、11月8日に行われる。バイデン大統領の支持率が低迷する中、民主党が優位を保っていた下院は、共和党が奪還することは確実と見られ、議席数を50ずつで分けあう上院でも民主党の苦戦が強いられる。そうなると、政権は民主党、議会は共和党のいわゆる“ねじれ”を生むことになる。
ちょうど8年前の2014年の中間選挙で、実際に同じことが起きていた。当時はオバマ大統領の2期目で、残りの任期は2年を切っていたが、共和党が上院、下院とも過半数を上回り、政権はもはや“レームダック”と呼ばれることになった。
その8年前の中間選挙が行われたその日、私はワシントンDCに入った。しかし、街は選挙結果に熱狂することもなく、むしろ予測の範疇であったかのように、いつもの火曜日の光景が繰り返されていた。
知られざる米国食肉産業のヘッドクオーター
その翌日から3日間、アーリントンにあるホテルで大きなコンベンションが開かれていた。米国食肉輸出連合会(USMEF)の年に1度の総会だった。
この米国コロラド州デンバーに本部を置く組織については、少し説明が必要だ。
米国の畜産業には「チェックオフ・プログラム(Checkoff Program)」と呼ばれるシステムがある。たとえば牧場から牛を1頭出荷、屠畜する場合に、そこにわずか1ドルに満たないほどの課金をして徴収するもので、1986年に全米で法制化されている。その総額は年間に約8000万ドルになるとされ、この資金運営を任されているのが、「BEEF BOARD(ビーフ・ボード)」という組織だった。いわば、政府の監督下で全米の牛肉生産者を束ねる民間の総合団体である。
これは牛肉ばかりではなく、豚肉の業界にも「PORK BOARD(ポーク・ボード)」がある。こちらも、豚1頭につき少額の課金からなる。