英国初の非白人首相リシ・スナク氏。右手首にヒンズー教伝統の赤いブレスレット(10月25日、筆者撮影)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

[ロンドン発]財源なしの大型減税で市場を大混乱させたリズ・トラス前英首相は英国史上最短命50日で引責辞任した。この事態を受け、与党・保守党党首選を経て10月25日に誕生したのがリシ・スナク首相(42)だ。

 英国では初となる非白人・アジア系・ヒンズー教徒の首相であり、同時にかなりの資産家でもある。妻アクシャタ・ムルティ夫人(42)と合わせた純資産は、実にチャールズ国王の個人資産の約2倍と言われるのだ。

 スナク氏とはいったい何者なのか。アクシャタ夫人は「インドのビル・ゲイツ」の異名を取るIT(情報通信)企業インフォシス共同創業者ナラヤナ・ムルティ氏の長女だ。英大衆紙デーリー・メールや英紙タイムズの2022年版リッチリスト(長者番付)によると、スナク氏とムルティ家の純資産は次の通りだ。

ナラヤナ・ムルティ氏:38億9000万ポンド(約6660億円)
リシ・スナク首相:7億3000万ポンド(約1250億円、アクシャタ夫人と共有)
アクシャタ夫人:4億3000万ポンド(約740億円、インフォシス株の時価)
ローハン・ムルティ氏:3億ポンド(約510億円、アクシャタ夫人の弟)
(参考)
チャールズ国王:3億7000万ポンド(約630億円、個人資産のみ)

大金持ちの夫人が「海外での収入は非課税扱い」になっていた

 今年4月、アクシャタ夫人が年3万ポンド(約510万円)を税務当局に納め、「ノンドム」の地位を得て英国での収入についてだけ税金を納めていたことが発覚した。「ノンドム」とは、海外で得た収入についてイギリスで納税しなくてもよいとされる「非定住者」のことだ。

 アクシャタ夫人はインフォシス株の0.93%を所有、過去7年半で約5400万ポンド(約92億5000万円)の配当を得ていると報じられる。「ノンドム」でなければ配当収入に対して約2060万ポンド(約35億3000万円)の税金を英国で納める必要があった。

 この事実が発覚した当時、ボリス・ジョンソン首相の不祥事が噴出、財務相だったスナク氏が次期首相の最右翼に躍り出た。

 そこでアクシャタ夫人は世論に配慮して昨年の配当約1100万ポンド(約18億8000万円)に対し約433万ポンド(約7億4000万円)の税金を納めることで同意した。それでもスナク氏が一度は党首選でトラス氏に敗れてしまった。そのことからうかがえるのは、保守党白人支持層における旧植民地インド系首相誕生への抵抗感の強さだった。