(舛添 要一:国際政治学者)
ウクライナ戦争は、停戦への手がかりも掴めないまま、激戦が続いている。ウクライナ軍は、欧米から供与された最新鋭の兵器を活用して、ロシア軍に反撃している。とくに、南部のヘルソン州ではロシアに占領された地域を次々と奪還している。親露派勢力は、ドニエプル西岸に住む住民を東岸地域に避難させている。
一方、ロシアはエネルギーインフラを集中的に攻撃しており、ウクライナの火力発電施設の5割、風力発電施設の9割、太陽光発電施設の5割を破壊したという。そのため、ウクライナ政府は、海外に退避している770万人の国民に対して帰国しないように要請している。
停電という武器を使って冬将軍を利用しようというロシアの戦略である。
今後の戦争の展開は予断を許さない状態になっている。
「汚い爆弾」のプロパガンダ
ここに来て、ロシアが急にあるプロパガンダを展開し始めた。それは、ウクライナが「汚い爆弾」、つまり放射性物質を含んだ爆弾を準備しているという主張である。この爆弾が使用されれば、数km先まで放射性物質が拡散する。
21日、オースチン米国防長官の求めに応じて、ショイグ国防相は電話で対談し、戦況について情報交換をしている。そして、23日には、ショイグ国防相は、アメリカ、イギリス、フランス、トルコの国防相と電話で会談し、ウクライナが「汚い爆弾」の使用を計画しているとの懸念を伝えている。
これに対して、英米仏3カ国の外相は、このロシアの主張は偽りだとして拒否する共同声明を発表した。