インドネシア国会議長は「非常事態」との認識示す

 同様の事態がもし日本で起こったなら大騒ぎになるところだが、インドネシア政界内では、事態の受け止め方についてかなり温度差が見られる。メガワティ元大統領の長女であるプアン・マハラニ下院議長は、10月21日、「子供たちの安全を脅かす非常事態である」との認識を示した。

「明らかになっている症例は氷山の一角であろう。保険当局が把握している数字に比べて実際の症例、子供の患者数は数倍に及ぶ可能性がある」

「こうした尋常ならざる事態の拡大に対して急性腎臓疾患の子供たちには完治するまでの医療費負担を無料とするべきだ」(プアン・マハラニ議長)

 これに対しブディ保健相は「我々のこれまでの状況、分析から尋常ならざる事態の拡大という段階にはまだ至っていない」と、まるで無理やりに事態の鎮静化をはかろうとするかのような見解を示し、プアン国会議長の認識とのズレが表面化している。

 インドネシアでは、国内メーカー製のインスタント麺から発がん性が認められる酸化エチレン(エチレンオキシド)が検出される騒動もあった。これは、10月6日、シンガポール食品庁から、インドネシア産のインスタント麺の2種類の製品から基準値を超える発がん性が疑われる酸化エチレンが含まれていると発表されたもの。当然ながら、当該のインスタント麺は市場から一斉に撤去された。

 この事態にインドネシアの国家食品医薬品監督庁(BPOM)は「同じ名称の商品でもインドネシア国内で流通している商品には酸化エチレンは使われていない」とコメントして国内消費者の不安払拭に躍起となった。

 このインスタント麺は7月に香港でも同様の措置を受けて商品は回収・廃棄されている。それに続くシンガポールの今回の措置なのだが、BPOMは本来なら国内流通商品の再検査を実施してしかるべきところを「国内流通商品には違法な成分は使用されていない」とのコメントだけで済ませようとする姿勢に国民から疑問の声も上がっていた。

 インスタント麵に関して食後の健康被害などは報告されていないが、今回のシロップ薬の問題に関してもBPOMの姿勢が改めて問われている。

 有力メディア「コンパス」が10月24日に発表したジョコ・ウィドド政権の満足度調査で「満足」と回答した人は1月の73.9%から62.1%と急落している。そうした中での出来事だけに、ジョコ・ウィドド大統領には「国民の命、とりわけ将来を担う子供たちの命を守ることは政府の最優先課題ではないか」とのメディアや国民の声を真摯に受け止め、必要な対応策を早急に具体化する姿勢が求められている。