(国際ジャーナリスト・木村正人)
[ロンドン発]ロシア本土とクリミア半島を結ぶ大動脈のクリミア大橋が破壊された。
これを受けて、ウラジーミル・プーチン露大統領が「国家存立危機事態」を口実に核兵器を使用するとの懸念が膨らむ中、露国家安全保障・国防会議が10日開かれた。プーチン氏最大の課題は「特別軍事作戦」の失敗と最大100万人の予備役動員に対し噴き出す国民の怒りをかわすことにある。
同会議の議長を務めるプーチン氏は「国防省の提案と参謀本部の計画に従い、ウクライナのエネルギー、軍事、通信施設に対し空・海・陸の長距離精密兵器による大規模な攻撃が行われた。わが国の領土でテロ攻撃を行う試みがさらに行われた場合、ロシアの報復は厳しく、もたらされた脅威に見合ったものになる」と述べた。
クリミア大橋はプーチンの「レガシー」
クリミア大橋(鉄道道路併用橋)はプーチン氏がクリミアを併合した後の2015年、クリミア半島とロシア本土を結ぶケルチ海峡フェリーの代替手段として着工された。道路部分は18年開通し、プーチン氏がコンボイのトラック1台を運転して開通を祝った。鉄道部分は19年に開通した。全長18.1キロメートル。まさにプーチン氏のレガシーを象徴する建造物だ。
プーチン氏は9日、クリミア大橋爆破を捜査するアレクサンドル・バストリキン捜査委員会委員長と対応を協議し「極めて重要なロシアの民間インフラを破壊することを目的としたテロ攻撃であることは間違いない。計画し、実行した黒幕はウクライナの情報機関だ」とウクライナを指弾した。
プーチン氏の発言は、バストリキン委員長の「爆発したトラックの手配に関わった人物を特定した。明らかなテロ行為だ。クリミアにとって極めて重要な大規模民間インフラ施設を破壊することを目的にウクライナの特殊部隊によって準備されたテロ行為だとの明確な結論に達した。共犯者としてロシア市民と外国人が関わっている」との報告を受けたものだ。