クリミア大橋の爆発に関して連邦捜査委員会のアレクサンドル・バストリキン委員長と会談を行うロシアのプーチン大統領(2022年10月9日、写真:ロイター/アフロ)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 ウクライナでの戦闘が一段と激化するなか、米国のトランプ前政権で大統領補佐官を務めたジョン・ボルトン氏が、今こそ米国は真剣にプーチン大統領を倒す作戦に着手すべきだ、という提案を発表した。ロシアのレジームチェンジ(政権の打倒による交代)を目指す工作を始めよ、という檄だった。

 この提言は、米国がまずロシア国内の反プーチン勢力を支援して内部からのプーチン大統領除去を第1の目標とすることを強調していた。こうした動きは、米国でプーチン政権への反発が高まっていることの表れとして注視される。

「もう遠慮をする時期ではない」

 共和党の歴代政権で国務次官、国連大使など対外政策関連の高官ポストを歴任してきたボルトン氏は、トランプ政権で国家安全保障担当の大統領補佐官となったが、2019年9月にアフガニスタン政策などをめぐってトランプ氏と意見が衝突して辞任した。だが保守系の戦略問題専門家としてなおその発言は重みを発揮している。

 ボルトン氏は10月上旬、国際安全保障専門の論壇サイトに「プーチンは去らねばならない=今こそロシアのレジームチェンジの時だ」と題する論文を発表した。

 同論文はまずバイデン大統領が今年(2022年)3月にプーチン大統領に対して「この男はもう権力の座にとどまってはならない」と述べ、プーチン大統領打倒のための斬首作戦までをも示唆したことを指摘し、「その直後にバイデン大統領の側近たちが『大統領はプーチン大統領の地位の変更や、いわゆるレジームチェンジを求めたわけではない』と釈明したが、もうそんな遠慮をする時期ではない」と書き出していた。