動物園に突然入ってきた救急車のなぜ?
Oさんが副業に入るのは、真夏と真冬の閑散期を除く、来場者の多いシーズンの土日祝日の9~17時。日当は8000円で土日に毎週入れば、月7万円くらいの収入になる。
「過ごしやすい時期に仕事が入るから、大変さはない。立ち仕事なので足腰も鍛えられる。それにいろんなハプニングがあって、けっこう飽きないのよ」
ある時、病院専用の民間の救急車が、動物園の駐車場に突然入って来た。下りてきたのはストレッチャーに横たわる、痩せた80~90歳くらいの高齢男性。「最期に動物園へ行きたい」と言うので、病院のスタッフが連れてきたのだという。
「その時は、『園内で何かあっても、こちらは責任持てない』とお引き取りいただいた。ちょっと冷たい対応とは思うけど、園内の警備員や来園者も困っちゃうから……」
パトカーに追われている自動車が入って来たこともある。Oさんたち警備員は、駐車場内の混乱を防ぐため、「いずれ出ていくから、出口で待ってください」とパトカーを先回りさせた。Oさんたちの予想通り、追われている車は出口で待ち伏せした警官に捕まった。
こうしたハプニングも、Oさんたち警備員の飲み会では、格好の話題になる。
「仕事の後に飲みながら、『今日は変なお客さんがおったなー』なんて感じで、共通の話題で盛り上がれる。だから普段は違う仕事をしている者同士でも、話題には事欠かない」