ゲーム感覚で仕事する中年男子

 Oさんの勤める動物園の駐車場は、1200台もの車が停められる広大な敷地だ。1年で最も来園者が多い桜の季節は、駐車場の警備員だけで50人以上が配置されるという。

 Oさんたち警備員は、ゲートから入った来園者の車を、園の入り口に近い手前の駐車場から、奥まった駐車場まで、順番に埋めていくことが仕事だ。

 各エリアに配置された警備員同士の連絡には、トランシーバーが使われる。まず入り口に立つ警備員が、「園前1台」という指令を出すと、入り口から一番近いエリアに配置された警備員が「西、1台了解」と返事をし、車を誘導する。この仕事はチームワークが欠かせない。

 Oさんは、トランシーバーの操作や車の誘導にもすぐに慣れた。その後は、この仕事が楽しくて仕方がないという。

「開園直後の9~10時は、1200台の車が一気に入ってくるから、もう戦場。でも慣れてくると、車の誘導はパズルみたいなもの。みんなで連携して空いている駐車場に車をどんどん当てはめていく作業が面白い。時間が過ぎるのがあっと言う間や」

 閉園時間の17時になると、車が一斉に出ていく。ガランとした駐車場を見ると達成感があるという。

「その後は、臨時の警備員たちみんなでご飯を食べに行く。それがもう楽しくて」

駐車場への車の誘導はパズル感覚だという(写真:アフロ)

 臨時の警備員の年齢は30~40代の男性が多く、50代も少しいる。Oさんと同じように警備員は副業で、本業は役所系の仕事をしている人もいれば、工場で働く人、フリーターもいる。

「職業、年齢も違う人たちのいろいろな話が聞けて面白い。会社の人間と違って、競争や社内政治がなくて気楽な点もいい。学生時代のアルバイト仲間みたいやな」

 本来なら本業の同僚とやるような付き合いが、副業にスライドしているのだ。