リモートワークに辟易したおじさんが注目した副業
Oさんは、関西の有名大学を卒業後、大手ハウスメーカーに就職。富裕層向けの住宅販売を担当し、トップの成績を収めてきたという敏腕営業マンだ。10年ほど前に、友人が経営する中小の不動産会社に転職し、現在は営業部長を務めている。
「家が一番売れるのは夕方の時間帯。暗くなったら、売りたい家を部下にライトアップさせとくの。一戸建てでもマンションでも、ライトが当たると建物は二割増しに良く見える。その時間帯に落としにかかると、だいたい決まるのよ。お客さんの7割は『衝動買い』だから……」
ニヤニヤしながら、営業手法を話すOさん。関西人らしく話し好きで、ほがらかなOさんにとって、営業は天職のようだ。
しかし、コロナ禍に入ってから現在まで、Oさんの会社はリモートワークが続いている。コロナ前は部下や同僚とのコミュニケーション、および「飲みニケーション」を楽しんでいたOさんにとって、リモートワークは憂鬱な日々の始まりだった。
「出社するのは給料日の月1回のみ。家の中にジーっとしとっても、全然おもろくない。カミさんにはうっとうしがられるし、趣味の釣りに出かける以外は外出も減って運動不足になった」
リモートワークに入ってしばらくした頃、そんなOさんが家のそばにある動物園にあった「駐車場の警備員募集 土日勤務のみ」という張り紙に注目したのは、当然の成り行きだったのかもしれない。
その動物園は、園内のライオンの雄叫びがOさんの家の中まで聞こえてくるくらい近所にある。
Oさんが警備員という仕事について、パッと頭に浮かんだのは服装のことだった。
「ボク自身、自宅のすぐそばでヘルメットをかぶるのはちょっといややなーと思った。でも動物園の駐車場の警備員は、ヘルメットではなくキャップ帽をかぶっている。それならええかもしれんなーと」
早速、Oさんは張り紙に書かれていた警備会社に電話をし、面接に出向いた。