8月26日、コロナ禍対応の影響とウクライナ紛争が続く中、世界の市場参加者の誰もが見守る「ジャクソンホール会議」が開催された。米西部ワイオミング州ジャクソンホールで毎年開かれる、各国の中央銀行総裁や政治家、学者などが集まる会議である。
ここで、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は約9分弱という短い時間ながら、今後もインフレ対策のために必要な利上げを続けるというメッセージを送った。それを受けて、米ダウ工業株30種平均は1008ドルの下落、S&P500は3.4%下げた。
元大統領経済諮問委員会(CEA)委員長は、筆者と入ったジャクソンホールのダイナーで、ウォールストリートと欧米メディアの反応についてこう述べた。
「表立って批判しているわけではないが、パウエル議長の発言が市場に対する配慮に欠けていると批判しているようだった」
もちろん、メディアの顧客は圧倒的に一般人である。米政治家も注意深く読んでおり、パウエル発言を表立って非難するメディアはない。
ただ、米ブルームバーグが「Powell’s 8-Minitte Speech Erases $78 Billion From Richest Americans」と題して、イーロン・マスクなど個別の富豪が被った含み損について書いたように、パウエル発言は人によって受け止め方が違う。そして、今回の報道はそこが重要だった。
こういう時には日本のメディアが参考になる。リアルタイムな記事ではないが、欧米メディアが一段落したところで、(それらをすべて読んでいるらしく)全体を総括するようなきれいにまとまった記事を書くからだ。
しかし、今回はパウエル議長の発言を純粋に米国民がどう受け止めているかを考察するため、日系メディアの記事を読まずに書く。そこには、日本銀行の黒田総裁が政治に翻弄される姿とは異なる、金融政策の独立性を担保されたFRBのパウエル議長の勇気ある発言が見て取れる。
【参考】ジャクソンホールのパウエル議長のスピーチ「Monetary Policy and Price Stability」