相手側損保会社は被害者の味方ではない

 では、交通事故の被害者・遺族はなぜ、加害者本人ではなく、実質的に損保会社と闘わなければならないのでしょうか。

 7月に出版された『交通事故 被害者家族のための 刑事・民事・保険 手続き安心ガイド』(藤本一郎弁護士著/若葉文庫)の中から、「示談代行サービス」について解説された一説をご紹介します。

<保険会社は、自動車保険に、いわゆる「示談代行サービス」をつけているのが通常です。このサービスは、次のような文面で約款に記載されています。

【次のいずれかに該当する場合は、当会社は、当会社が被保険者に対して支払い責任を負う限度において、当会社の費用により、被保険者の同意を得て、被保険者のために、折衝、示談または調停もしくは訴訟の手続きを行います。

 ・被保険者が事故にかかわる損害賠償の請求を受けた場合
 ・当会社が損害賠償請求権者から次条の規定に基づく損害賠償額の支払いの請求を受けた場合】

 この「示談代行サービス」により、交通事故が発生すると、加害者が契約している保険会社が窓口になり、被害者との交渉にあたります。そして、保険会社は被害者に対し、治療費、休業損害、交通費などを支払います。これらを支払うことは、当然とはいえ、被害者にとってありがたい対応だと評価できる部分もあると思います。>

 その上で、本書では「保険会社のスタンス」について、次のような本音も明かされています。

<保険会社は、被害者が被った損害を補償するという重要な役割を果たしています。一方で、自らの営利を追求する会社でもあります。利益を上げるためには、被害者に対する支払い額を少なくすることが必要になります。(中略)

 被害者と交渉するのは、「加害者が契約している」保険会社になります。保険会社にとっては、自動車保険を契約していた加害者が「お客さま」である反面、被害者は「交渉の相手」です。保険会社は、けっして「被害者の味方ではない」ことを認識しておきましょう>