実際に、交通事故の被害者・遺族が、損保会社の「払い渋り」ともいえる二次被害に苦しむケースは少なくありません。客観的な証拠もないのに、一方的に大きな過失割合を押し付けられたり、また、被害者の逸失利益や介護費用などを大幅に減額されたりと、極めて低い損害賠償額を提示されるケースは枚挙にいとまがありません。
とはいえ、誰もが民事裁判を起こせるわけではなく、多くの人が低額での示談に応じ、泣き寝入りを強いられているのが現状です。
被害者団体が損保による二次被害を金融庁に報告
2022年7月26日、こうした現状に一石を投じる動きがありました。交通事故の被害者・遺族らでつくられた「一般社団法人関東交通犯罪遺族の会(通称・あいの会)」が、日本損害保険協会と損保会社を所管する金融庁を担当する鈴木俊一内閣府特命担当大臣(金融)に対し、指導の徹底を求める意見書を提出したのです。
(参考:産経ニュース)交通事故の「二次被害」なくして 遺族ら金融庁に意見書
https://www.sankei.com/article/20220726-6VTKLVWTWJPIFCW7AMSF2RTVD4/
同会が金融庁に提出した「意見書」には、被害者・遺族が受ける過酷な二次被害について、こんな一文がありました。
『裁判での反論や主張は当然の権利です。また支払わなければならない賠償金をできるだけ減額したいという企業論理も理解します。しかし、保険会社弁護士は民事裁判において、必要な反論や主張を逸脱して、裁判所が認めることすら想像できない荒唐無稽な主張や、遺族等の尊厳を踏みにじる冒涜的な言動を行います。一例を上げると「助かるはずがなかったのだから」と医療費の支払いを拒絶したり、提訴まで時間がかかったことを「遅延金目当てである」と主張したり、憶測ばかり並べて「医療ミスがあったに違いない」と主張したり、などが常態化しています。これは民事裁判を経験したほとんどの遺族等が経験している現実です。このため民事事件で遺族等は大変な苦痛を受けることになります』
そして、意見書にはこうした現状を改善するために、金融庁に対する以下の4つの要望が記載されていました。
1.金融庁から各損害保険会社への徹底した指導
2.日本損害保険協会でのガイドライン策定と、その徹底に向けた各損害保険会社への指導
3.各損害保険会社でのCSR(企業の社会的責任)の再認識とその社内徹底の遂行
4.各損害保険会社から保険会社弁護士への上記共有およびその履行チェック』