日本政府は2050年までのカーボンニュートラル実現を目指している(写真:アフロ)

(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)

GX推進の一環で「グリーンGDP」整備

 2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言した。

「排出を全体としてゼロ」というのは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量と、植林や森林管理などによる吸収量を均衡させることを意味する。カーボンニュートラル実現のためには、温室効果ガスの排出量削減や、吸収作用の保全・強化を図る必要がある。

 2050年カーボンニュートラルの達成へ向けて、岸田政権はGX(グリーントランスフォーメーション)を推進する方針だ。GXとは、産業革命以来の化石燃料中心の経済構造をクリーンエネルギー中心に移行する変革を指す。

 岸田政権は今年7月にGX担当大臣を新設、GX実行会議を設置した。年内にはGXの今後10年のロードマップを示す予定だ。

 政府は、「骨太方針2021」および「骨太方針2022」で、GX推進の一環として「グリーンGDP(仮称)」の研究・整備を進めると明記した。GDP(国内総生産)は経済規模を表す指標だが、経済活動に伴う環境への負荷を捉えられていない。

 政府は、経済活動の環境への影響を加味した新指標を導入、環境と経済の関係を「見える化」することで、GX推進や環境対策を後押しし、持続可能な成長に繋げる狙いがある模様だ。

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内閣府は「汚染調整済経済成長率」を公表

 8月5日、内閣府経済社会総合研究所は「環境要因を考慮した経済統計・指標について」と題した報告書を公表、「汚染調整済経済成長率」の試算値を示した。主要各紙は「グリーンGDP」を公表したと報じているが、内閣府は現段階では正式に「グリーンGDP」と呼称していない。

 今回の「汚染調整済経済成長率」は、経済協力開発機構(OECD)による推計方法を参考にした暫定的な試算とのことで、いわば「グリーンGDP」の叩き台の位置づけだ。内閣府は今後も「グリーンGDP」の研究・整備を進める予定だ。

 内閣府資料によれば、今回公表した「汚染調整済経済成長率」とは、温室効果ガスや大気汚染物質の削減努力を経済成長率に上乗せして評価する指標だ。

 1995年から2020年までの実質GDP成長率は平均して+0.57%であるが、汚染調整済経済成長率は+1.04%となる。この期間中、省エネや再生可能エネルギー普及により、温室効果ガス等の排出削減が進んだ点がプラス評価されている。


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