HIVの予防薬がゴムなしセックスを助長
サル痘が流行したからといって、なかなかこうした性的な行動が減速するわけではないようだ。リスクにつながる性行動を促す要素の一つが娯楽用の違法ドラッグである。
薬物は性交渉と一緒に使うことが一般化し、リスクが高い性行為へのハードルをより引き下げている。それは中毒性も伴い、SNSへの没頭もあいまって、性交渉の頻度を高め感染リスクを一層高めている。
「娯楽化する性欲と性衝動を抑えることは困難であることは理解できる」とタロウさんは語る。タロウさんによれば、このほかにも男性同性愛者にサル痘が広がりやすい要素を挙げればなかなか尽きない。
本来であれば、リスクを避けるための「PrEP(暴露前予防投薬、pre-exposure prophylaxis)」という薬の存在も、逆にリスクを伴う性行動を増やす要因になっているという。
PrEPとは、HIVの非感染者がHIVに感染しづらくするようウイルスに抵抗する薬を日常的に飲むもの。タロウさんによると、これが簡単に処方され行きわたるようになっており、その安心感からリスクのある性行為を助長している面があるという。つまりコンドームをつけないリスクの高い性交渉につながりやすくなっている。
男性同性愛者が国境を越えて出会いを求めるようになっていたのも大きい。今回、スペイン西部のカナリア諸島グラン・カナリアで5月に開催された著名な男性同性愛者のためのイベント「マスパロマス」に世界から何万人もの男性同性愛者が集まり、サル痘が広がったことが各国から報告された。
男性同性愛者は一様に出会い系アプリを使っており、一国どころか世界中の同性愛者同士で旅行先や交流が容易な状況になる。
タロウさんは、「(サル痘感染者が7月時点では世界で最も多い)スペインでの急激な増加は、ホリデーシーズンの際に英国からスペインに行く旅行が男性同性愛者の間で人気だということも大きいと思う。コロナ後の状況は不明だが、地中海を周る大型のゲイ専用クルーズ船も多数の人々を集めてきた」と言う。
アプリの存在によって、同性愛者の出会いは国境を越えることも可能となった。特に、男性同性愛者の性行為は違法とされる国も多い。その場合、国を脱して出会いを求めることになるが、助けになるのはアプリだ。
【イギリスの日本人ゲイの方からのメール、実態とは】(https://youtu.be/7NmiQ9PyPc0)