安倍元首相の死の背後には清算すべき昭和史がある(写真:AP/アフロ)

(山本一郎:情報法制研究所 事務局次長・上席研究員)

 自己紹介がてら書いておくと、私の義祖父や山本家の縁戚は大日本帝国海軍の将校として第二次世界大戦に従軍し、敗戦後に長年のシベリア抑留を経験しました。一番身近であった縁戚は抑留の最終に近い1955年秋に帰国を果たし、私が幼い頃に、あまり語りたがらない凄惨な体験についてお話いただいたのを今でも記憶しています。「戦争だけは、してはならない」と。

 また、私の親父が資源貿易や産業廃棄物業界の仕事をする中で、旧ソビエト連邦との間で鉱物取引や鉄スクラップ、中古車販売などを長らく手がけていた関係で、私自身も親父に連れられて何度となく旧ソ連ほか東側諸国を訪問しました。

 大学に入ると、しばらくの期間は旧日ソ学生交流会(現・日本ロシア学生交流会、当時の会長は自民党参議院議員・長峯誠さん)に在籍し、短期間ですがモスクワ大学にも足を向けていました。

 その後、私が介護や育児など家庭の事情でセミリタイヤするまで、15年ほど親父の仕事を引き継ぎ、主に極東ロシアを中心にほんのり仕事をさせていただきました。今思うと、へたくそなロシア語でよくビジネスの世界を渡ってきたなと冷や汗をかく部分があります。

 そんな私が日本共産党を嫌いな理由は、硬直化して過去の反省をできないでいるからです。

 独善的な党本部の方針を内部批判の許さない形で上意下達し、日本共産党が活動する中でしてきたことを自省することなく、今なお少数政党として国政に参画しています。先日、日本共産党結党100年を迎えたそうですが、野党共闘などと称して生き残りを図ろうとしている現状を見るに、もう少しやりようがあるだろうといつも思います。

 もちろん、党委員長である志位和夫さんや参院東京選挙区で今回当選した山添拓さん、野党きっての経済通である大門実紀史さんなど、共産党に関わる方の中にも個人個人で尊敬している人、素晴らしいなと思う人はおりますが、概して共産党はよろしくないと思っています。

 ネットでは、主に日本共産党が破防法に基づく調査対象団体であることから、望ましくない政党ではないと指弾する声がかねて強くあります。ただ、私が共産党の活動において、今なお原罪と思っているのは、まさに今回の安倍氏殺害で明らかになったように、旧統一教会が自民党の保守傍流・清和会の岸信介さんらと結託し、国際勝共連合を組織してまで共産党を排除したかったという事実です。

 そもそも、かねて陰謀論界隈では「吉田茂はCIAの手先だった」「岸信介もCIAから巨額の資金を得て活動していた」と語る人たちが多くあります。ですが、日本はそもそも敗戦国であり、アメリカSCAP(GHQ)の統治下にありました。もちろん、途中までアメリカさんも理想主義に燃えて軍隊解体に平和憲法制定までやったものの、終戦とともにやってきた米ソ対立の最前線に日本が位置し、またお隣の朝鮮半島で凄惨な戦争が勃発したことで、アメリカ軍の基地を持つ日本は極東・アジアにおける対共産党の盾となり最前線となったわけですよ。終戦後しばらくアメリカの統治下にあり、冷戦時には西側陣営に入った日本がCIAなどアメリカの情報部門の影響を受けるのは当然のことです。

 アメリカの都合で巣鴨プリズンからいわくつきの面々が出てきて財を成すなど微妙なことはあったにせよ、終戦直後の70年前と今とでは「共産主義」の問題について感じるリアリティが全く異なるのではないか、と思うのです。