こうして、政権党に食い込んでいった統一教会は、検察の捜査の対象から外されるという大きな成果を得ているのである。

 地下鉄サリン事件などの犯罪を重ねてきたオウム真理教の教祖、麻原彰晃が逮捕されて処刑され、組織が壊滅させられたのに対し、同じカルトである統一教会が生きながらえているのは、まさに政界工作のたまものである。

選挙制度と自公連立政権

 選挙に強い議員は、あえて問題のある団体の支持は求めない。しかし、小選挙区制では、惜敗率で復活する道はあるにしても、1票差でも負けは負けである。

 中選挙区制では、たとえば5人区では5人が当選するので、5番目で当選してもよいのである。素性の不明な団体に頼るなどの無理をする必要はない。5議席のうち、野党が2議席を確保していても、自民党にはまだ3議席ある。同じ党内における派閥間の争いとなるが、農政なり国防なり、自分の専門分野を訴えて集票すればよい。単純計算すれば、有権者の2割の票を確保すればよいからである。

 ところが、小選挙区制では、野党と1対1の対決となるので、あらゆる階層から集票せねばならなくなる。とくに自民党に逆風が吹いているときには、必死になって票を集めることになる。そこに統一教会が支援の手を差し伸べ、応援した候補が当選した暁には、見返りを求めてくるのである。

 選挙応援の成果は、これまでのところ十分に上がっている。

 参議院の全国比例区についても、小選挙区と同じことが言える。比例区は、候補者の個人名でも政党名でも選択できるが、当選するのは個人名の多い順である(特定候補は除く)。そこで、先述した井上義行議員のように、賛同会員にまでなって、統一教会の票を得ようとするのである。

 安倍元首相が統一教会や日本会議と親和性があったことは否定できない。安倍政権下で、これらの団体が勢力を拡張したのである。

 さらには自民党と公明党の連立政権も問題を複雑にしている。小選挙区制では、自民党は公明党の協力がなければ選挙に勝てない。こうして、自公連立政権が続いている。1999年10月から2009年9月まで、2012年12月から今日まで、20年間にわたって自公政権が継続しているのである。その間、自民党は足腰が弱くなり、公明党の支援なしには勝てなくなってしまった。禁断の実を食べてしまったようである。

 公明党は、宗教団体である創価学会を母体とする政治団体である。したがって、「政治と宗教」というテーマは、ある意味でタブーになっている。このテーマについては、自公連立政権下では沈黙を余儀なくされるようになっている。

 今回も、公明党の山口那津男代表は「捜査が進展中なのでコメントは控えたい。状況をしっかり見極めたい」と述べるにとどまっている。

 カルトを巡る政界の闇は晴れそうもない。