(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
「統一教会」に出自がある、とツイートされたことを、名誉毀損として訴えている自民党の国会議員がいる。
「統一教会」は安倍晋三元首相を銃撃して命を奪った山上徹也容疑者(41)がその犯行の動機にあげたことから、いま再び注目を集めている。母親が同教団に多額の寄付をして家庭が崩壊したことに恨みを抱き、つながりのある安倍氏を襲った、と供述していることが報じられている。
ただ、現在では「統一教会」こと「世界基督教統一心霊協会」は存在しない。日本では創始者の文鮮明が死去してから「世界平和統一家庭連合」に名称を変え、妻の韓鶴子が主宰者となっている。その「家庭連合」が事件から3日後に記者会見を開き、山上容疑者の母親が会員であることを認めたことから、それまで公然の秘密だった団体名を「旧・統一教会」などとしてメディアが一斉に報じはじめた(なお、本稿ではその歴史的背景にも触れることから「統一教会」と表記する)。
「原理研や統一教会に対し反社会的な団体との印象を抱く者が少なくない」
その韓鶴子が総裁となり、2005年にニューヨークで設立したNGOに「天宙平和連合(UPF)」というものがある。いわば、統一教会のフロント団体だ。昨年9月にこの団体が開催したイベントに、安倍氏は韓鶴子を表敬するビデオメッセージを送っている。
山上容疑者はこのビデオメッセージを見たと供述し、また統一教会を日本に招き入れたのが祖父の岸信介元首相だったことも、安倍氏を殺した動機だった、という。
その統一教会のいわゆる学生組織に「原理研究会」がある。文鮮明が示した教義“統一原理”を研究する組織として、主に大学の学生サークルとして活動しながら、信徒を勧誘している。
この原理研の出身であるような書き込みをされたとして提訴しているのが、自民党の世耕弘成参議院議員だ。世耕氏は第1次安倍政権で首相補佐官、第2次政権で経済産業大臣を務めた。安倍氏の最側近の1人で、安倍氏亡き後は集団指導体制をとるとされる安倍派の屋台骨を支える存在とされる。しかも現在は参院幹事長として自民党の要職にある。