(舛添 要一:国際政治学者)
参議院選挙中に安倍元首相が銃撃され死去するという事件は、世界を震撼させた。要人警護の不備など、様々な問題が露呈したが、政治家に対するこのようなテロは許されるものではない。私は第一次安倍内閣の閣僚であり、共に仕事をしてきた立場から、安倍元首相の御冥福を心からお祈りする。そして、このような事件の再発を何としても防がねばならないと思っている。
山上徹也容疑者の犯行動機
狙撃犯の犯行の動機が母親が入信している統一教会(2015年に「世界平和統一家庭連合」という名称に変更されているが、便宜上、「統一教会」と記す)に対する恨みだという。
統一教会は、合同結婚式や霊感商法などで有名なカルト教団である。
山上徹也容疑者が警察に供述したところによれば、母親が統一教会に入信し、1億円にものぼる献金をした結果、破産し、家庭が破壊されたために、その団体に恨みを持ち、教団のトップを殺害しようとしたという。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大でトップの韓鶴子総裁が日本に来なくなったために目的を遂げられず、代わりに安倍元首相を狙ったのである。
彼は、安倍元首相が統一教会と深い関係にあると考えた。安倍元首相は、昨年9月に、統一教会の関連団体である「UPF(Universal Peace Federation)」がイベントを開催した際に、ビデオ・メッセージを送り、「演説する機会をいただいたことを光栄に思います。UPFの平和ビジョンにおいて、家庭の価値を強調する点を高く評価致します」とか韓鶴子総裁の名前をあげて「敬意を表します」と述べていた。
このビデオ・メッセージの件を容疑者は知り、安倍元首相と統一教会との関係を確信したようである。
また、安倍元首相の祖父、岸信介元首相は、教団の文鮮明開祖と知り合い、日本への布教に協力している。1968年に「国際勝共連合」を日本に設立したときには岸元首相も関与している。このことはよく知られており、山上容疑者も当然認識していたはずで、それが、安倍元首相を標的にしたことにつながっている。