(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
安倍晋三元首相が殺されてから、2週間が経つ。
手製の銃で襲撃して、その場で逮捕された山上徹也容疑者(41)が「母親が、ある団体にのめり込み、多額の寄付をして家庭が崩壊した。団体のトップを狙おうとしたが難しく、安倍氏とつながりがあると思ったから襲った」という趣旨の供述をしていると報じられると、事件から3日後の11日にかつての「統一教会(世界基督教統一心霊協会)」が名称を変えた「世界平和統一家庭連合」が会見を開いて、母親が信者であることを公表する。
ここから世論は安倍氏と統一教会との関係、さらに政治と宗教の関係が取り沙汰されるようになったと思えば、いまや関心は統一教会に向かっている。
容疑者と母親との関係抜きに語れない「安倍元首相銃撃」に向かった動機
統一教会といえば、いわゆる霊感商法や合同結婚式が社会問題化し、資金集めや布教活動、あるいは宗教儀式で違法とする司法判断が積み重なっている。
山上容疑者の母親も親族に無断で家や土地を売るなどして1億円近くを寄付したと報道されているが、こうした高額の献金がトラブルとなって返金訴訟に発展する事例はあとを絶たない。いわば「反社会的」性格が強く、「カルト」と呼ぶ声もある。
しかし、会見で統一教会は、山上容疑者が会員であったことはない、としている。教団との直接の関係はない。あくまで母親を介してのものだ。そうすると山上容疑者という個人に焦点を当てれば、事件の動機が形成されるまでの母親との直接的な関係を無視することはできない。