ADHDの特徴は、以下のようなものだ。

①注意集中困難/ひとつに注意を持続できない。注意がすぐに転動される。
②多動性/落ち着きがない。動き回る。
③衝動性/衝動や欲求のまますぐに動いてしまう。衝動や欲求の制御すなわち自己コントロールが難しい。

 私の知る“2世”の中にも、現在はオウム真理教を離れたとはいえ、急に衝動的になって感情がコントロールできない人がいる。わかっていながら自分でもどうしようもないから、なおさら悩み、苦しんでいる。

深いトラウマを負ったアダルトチルドレン

 報道によると、山上容疑者は事件を起こす前に派遣社員として働いていた職場で、トラブルを起こすようになったとされる。作業手順を守らなくなり、上司や同僚が叱責すると「どうしてそんなこと言うんや!」と反抗的な態度をとったという。対人関係もうまくいっていなかったようだ。

 自らを虐げたはずの母親に殺意が向かなかったのは、「共依存」の関係にあったからだろう。共依存とは元来、アルコール依存症の夫とその妻との関係を指した。たとえば、依存症の夫のそばを離れずに面倒を看る献身的な妻。「自分なしでは生きられないような無力な人物」の世話をすることに充実感を覚える一方で、「憎みながら離れられない」という関係ができあがる。

 実は、1970年代から米国でアルコール依存症の親を持つ子どもが大人になると、対人関係の問題や生きづらさに苦悩する事例が多いことがわかってきた。このことから、家庭内のトラウマ(心的外傷)、虐待や両親の不仲など「機能不全」となった家族の中で育った子どもも、アルコール依存症の親を持って育った子どもと同じ特徴が生じることがわかってきた。そうした子どもたちを「アダルト・チルドレン(AC)」と呼んだ。女性タレントが合同結婚式に参加することで、いまと同じようにテレビのワイドショーが統一教会で盛り上がっていた1990年代に、話題にもなっていたはずだ。

 ACにも様々な特徴があるが、機能不全となった家庭を支えるために、親の愚痴を聞いたり、幼い弟妹たちの親代わりになって面倒をみたりと、「よい子」として振る舞う傾向がある。「よい子でない私は捨てられる」という脅迫観念からそのような行動パターンを身につけたはいいが、自分の感情を素直に表現できなくなっていく。それがやがて家から離れてひとりで生きるようになると、人間関係に行き詰まるのもひとつの特徴。自分がなんのために生きているのか分からなくなったり、緊張が続いて生活に疲れたりする。

 山上容疑者が海上自衛隊の任期自衛官だった20代前半で自殺未遂を起こし、兄妹に保険金を残そうとしたとも報じられている。宗教への「依存症」の母親を持つとすれば、ACのアプローチのほうがわかり易いかも知れない。いずれにしても、子が親に虐げられることに変わりはない。