カルト2世に見られがちなADHDに重なる症状
山上容疑者に限らず、“カルト2世”が苦しむのは、親からの教義の押しつけだったり、自分で自由に生き方を選べなかったりする心理的虐待だったりするが、酷いものになるとそこに教義を教え込ませるための暴力といった身体的虐待まで加わる。もっとも、親の教えを素直に受け入れ、そのまま信者となった“2世信者”にはそんな苦しみは必要はない。それがいいのかどうかはまた別の問題だ。
虐待を受けて育った子どもには、様々な影響が出てくることが知られる。専門家の多くが指摘するのが、発達障害の「ADHD(注意欠如・多動性障害)」に重なる症状が見られることだ。それも様々なアプローチで検証されていることを、過去の取材で知った。
たとえば、生後から5歳くらいまでの子どもは、親(養育者)との間に「愛着(attachment=アタッチメント)」が形成される時期にある。愛着とは簡単にいえば「なつき」のことだ。自力で身体やこころを守れない乳幼児は、誰か大人になつくことで、安全感を得る。その上で子どもは成育とともに活動の範囲を広げ、この世界を知っていく。それが社会的な行動の土台となっていく。
ところが、親がそばにいない、あるいはそばにいても安心感を与えてくれないと、愛着が形成できない「愛着障害」となる。それが大人になっても人との距離がうまくとれないという障害となるばかりでなく、そこか生じる症状や行動様式がADHDと重なるのだ。
また、虐待を受けた子どものほとんどが「複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害)」を患うことも、最近では広く知られる。複雑性PTSDは、戦争体験や事故などの一時的な体験によって引き起こされる従来のPTSDとは違い、むしろ虐待やいじめ、ハラスメントなど長期に繰り返された体験によって生じる。昨秋、小室圭さんとの結婚を前にした秋篠宮家の長女の眞子さんが、複雑性PTSDと診断されたのも記憶に新しい。ここから引き起こされる症状が、ADHDと重なると指摘されている。