はじめまして。榎(えの)澤(さわ)祐一(ゆういち)と申します。

 今回から「ビジネスパーソンのための情報活用」というテーマで、ビッグデータ時代に陥りやすい罠、あるいは知っておきたい重要な情報活用術をご紹介していきたいと思います。

 簡単に自己紹介しますと、私は20年ほどの間、大中小それぞれの企業のマーケティングや経営企画といったデータの取り扱いが多い部署に勤務しました。

 現在は大学の経営学部で教員として働いています(専門は消費者心理学)。企業実務にも携わっています。

ある現場での情報活用の話

 この連載では、ビジネス現場での情報活用について、架空のケースを例に挙げてご紹介していきます。※架空ですが、実際にあったケースをいくつか組み合わせて構成しています。

 以前、音楽プロデューサーを務めていた時にこんなことがありました。

 私があるプロジェクトの現場を離れることになり、後任の担当者に引き継ぎました。そして、その後任の担当者が初めて担当した商品が発売されることになりました。

 商品としては、私が担当していた時と価格・曲数とも変わりはありません。

 収録された曲がアニメやドラマなどの主題歌に「なった」「ならない」の違いもなく、宣伝費にも大きな変化はありませんでした。

 つまり、仕事の第一歩として後任の担当者は、私が担当していた時の商品構成をほぼ「完全コピー」したというわけです。

 後任の担当者は大きなミスもなく、仕事を進め、安心した様子で小売店からの初期発注数の確定日を待つことになりました。

 CDビジネスでは、発売日の2週間前にはCDチェーンからの初期発注数が確定します。私はその日の午後になり、後任の担当者のもとに状況を聞きにいきました。

 すると、どうでしょうか。CDの売上は前作と比較して約3割減少しているというのです。