(北村 淳:軍事社会学者)
対中強硬派の米軍関係者(現役退役の軍人、シンクタンクの研究者、軍事官僚など)の間では、安倍晋三前首相の評判がすこぶる高い。台湾有事の際には日米が軍事的手段によってでも台湾を支援しなければならないと公言しているからだ。
米軍関係者といっても、中国、台湾、日本を巡る軍事情勢に精通している人々はごく少数だ。「インド太平洋重視」などと声高に主張するのは、基本的には大西洋ヨーロッパを重視していることの裏返しと言えよう。
したがって対中強硬派といっても、それらの人々のほとんどの認識は、やはり対中警戒派のホワイトハウス首脳や政治家たちと変わらない。すなわち、一般論的に中国共産党は自由主義の敵であるがゆえに、「目に余る中国の軍事的膨張」を抑え込み、自由主義陣営の一員である台湾を守らなければならない、といった程度の認識である。
もちろんアメリカに付き従って中国に対抗しようという反中勢力が少しでも確保できることは、それら単純な対中強硬派にとって望ましいのは当然である。そのため、日本の前首相の言動が大いに評価されているのはまた当然と言えるだろう。