対艦ミサイルを発射する台湾海巡署の巡視船「安平」(出所:台湾軍)

(北村 淳:軍事社会学者)

 先週5月27日、台湾国防部が運営する軍事通信社は、雄風II型対艦ミサイルを台湾海巡署(沿岸警備隊)600トン級巡視船「安平」(CG -601)から発射したことを公表した。

 台湾軍と中国軍の間には圧倒的な戦力差があり、台湾軍は劣勢に立っている。とりわけ台湾の軍事拠点や社会インフラを何度も壊滅させられるだけの中国のミサイル戦力、ならびに台湾本島を二重三重に取り囲み海上封鎖する能力を持った海軍力は、共に極めて強大だ。

 そうした世界最強の中国軍長射程ミサイル戦力に対して、台湾軍はアメリカからの弾道ミサイル迎撃システムの輸入調達を加速させると共に、自らも中国本土を攻撃するための長射程ミサイルを開発し量産を開始している。

 一方、中国海軍による封鎖作戦に対しては、支援軍の来援を期待して、中国海軍による台湾周辺の海上封鎖維持に少しでも打撃を与えるために必要な対艦ミサイル戦力の強化に努めている。今回の沿岸警備隊巡視船からの対艦ミサイル発射実験も、台湾封鎖に風穴を開けるための対艦ミサイル戦力強化努力の一環である。