埋もれた師匠の「見える化」

 師匠のありがたみを身をもって体感したこと。そして、この地域にはあらゆる師匠が眠っていると気づいたこと。

 二人の長老がくれたものを踏まえて取り組み始めたのが、埋もれた師匠たちの「見える化」だ。師匠たちのプラットフォームづくり、とも言える。

 地域住民でつくる「外山地域街づくり委員会」のホームページを舞台にして、この地のなりわいとそれにまつわる師匠たちのストーリーを紹介し始めた。

外山地域街づくり委員会(https://toyamamachidukuri.jimdo.com/)

写真地域の師匠たちを紹介する外山地域街づくり委員会のホームページ

 自然薯や黒にんにくをつくる井上秀雄さんは、取材中、何度も「後継者がほしい」とつぶやいた。

 原木しいたけを育てる山田多賀男さんは、「苦労するから簡単にはすすめられんが、本当は、誰かにやってほしいなあとは思っとる」と語った。

 ここでの仕事は、自然の中で体を動かせる。それ一本では成り立たなくても、春夏秋冬・朝昼晩を駆使してオリジナルのポートフォリオを組める。師匠の技術と人脈を引き継いでいくのは「超マイクロ事業承継」という感じもある。「リモートワーク」「副業」といったキーワードとも相性がいい。そして何より、地域が喜んでくれる。

 いったい「魅力的な仕事」とは何だろうか。師匠たちの言葉に、そう考えさせられる。

 地方移住を阻むラスボス「なりわい」と戦う人たちに、わずかながらのアイテムを――。そんな思いを込め、より太く、長く、この取り組みを続けていく。