人生で初めて得た「師匠」、その二つのよさ

 反応が真逆すぎて、またもや面食らった。渡りに船。拾う神。困難に立たされた、持たざる者に手を差しのべる人の偉大さよ。

「林師匠の弟子」という肩書を手に入れたその日以降、ことあるごとに師匠のもとへと通った。芽かきや消毒、肥料やり。8~10月にかけては、早朝の収穫手伝いに計72日間出向いた。

夏、いちじくを収穫する林師匠

 人生で初めての「師匠」を得て、二つのよさを実感している。

 一つは、技術・物理的な面。師匠の師匠たるゆえんとも言えるが、長年の経験に裏打ちされた洞察力がある。弟子はそれを間近で見て、実践して、解説を聞ける。How To系のYouTubeが増えたとはいえ、動画ではここまで学べない。地域で何をなすにしても「命綱」となる人脈を紹介してくれるのもありがたい。

 もう一つのメリットは、精神的な安心感だ。

 果たして、これでいいのだろうか。所期の思いを貫こうとする中でも、不安にさいなまれることは多々ある。「大丈夫や」。林師匠が口癖のようにつぶやくその一言が、絶対的なよすがとなっている。

 師匠に関する示唆を与えてくれたもう一人の長老は、吉田喜作さん(82)。吉田さんは、本巣市の中でもより山深い北部の旧村地域、根尾に暮らす。