杏梨さんはきっぱりとこう言います。
「そもそも、父は信号無視などしていません。改造バイクにも乗っていません。このほかにも、私たち子どもの名前を『DQNネーム』などと書かれたこともありましたが、私たちの名前は今回の事故とは何の関係もありません。いったい、これまでにどれだけの方が一方的な書き込みで傷つき、泣き寝入りを強いられてきたのでしょうか……」
事故の真相究明に乗り出した子どもたち
杏梨さんの父親・仲澤勝美さん(当時50)は、2019年1月22日午後6時過ぎ、仕事先からスクーターで帰宅する途中、伊豆縦貫道下の市道交差点で乗用車との衝突事故に遭い、死亡しました。
事故の翌朝、新聞は三島署の発表をもとに以下のように報じました。
<二十二日午後六時ごろ、三島市萩の信号のある市道交差点で、同市徳倉一の会社員仲沢勝美さん(50)のミニバイクと、沼津市大岡の会社員〇〇〇〇さん(46)の乗用車が衝突した。仲沢さんは全身を強く打ち、搬送先の病院で死亡した。三島署によると、仲沢さんは右折しようとし、〇〇さんは直進していた>(『中日新聞』2019.1.23/*記事では乗用車の運転手は実名、また仲澤さんの姓は新聞表記では仲沢)
しかし、遺族は当初から、「右折は絶対にありえない」ということを確信していました。仲澤さんは普段から「この大通りは危険だから」と言って、あえて裏道を通っていたことを知っていたからです。
「このままでは『死人に口なし』のまま事故が処理されてしまう」
杏梨さんたち4人の子どもたちは、ショックのあまり動くことのできなくなった母親の代わりに、真実究明に乗り出しました。目撃情報を募るビラを作って新聞折り込みに入れたり、現場で聞き込みを行なったりと、独自の調査を行ったのです。