ネットでの誹謗中傷に厳罰化の流れ

 交通事故や事件の被害者遺族が、ネット上でいわれなき誹謗中傷を受ける事案が後を絶ちません。

 東京・池袋で起こった母子死傷の暴走事故では、遺族に対してSNS上で「金や反響目当てだ」などと誹謗中傷を繰り返していた男(22)が今年3月特定され、書類送検されました。ところが、その後に飛び込んできたニュースには、愕然としました。

 なんとこの男、2021年12月に大阪市内で危険なあおり運転をし、この件で書類送検されていたというのです。それだけではありません。「事故ごっこ」などと称し、マネキン人形などを交差点に置いて他車の通行を妨害した疑いでも送検されていました。道路上でも、ネット上でも、極めて悪質な行為を繰り返していた人物だったのです。

 そんな中、政府は今年3月8日の閣議で、SNS上の誹謗中傷対策を強化するため、公然と人を侮辱した行為に適用される「侮辱罪」に懲役刑を導入。法定刑の上限を「1年以下の懲役・禁錮」と「30万円以下の罰金」に引き上げることを決めました。

 仲澤さんの死亡事故の場合、当初、事故の事実関係が取り違えられて報道されたことがきっかけとなり、遺族の行動に対してSNS上での過酷なバッシングが高まりました。実際には信号無視による被害者であったにもかかわらず、さも仲澤さんに非があったような、悪質な虚偽の書き込みは、死者への侮辱に当たるのは当然でしょう。

 冒頭で抜粋した一連の書き込みが、本件に何らかの利害がある関係者なのか、それとも全くの第三者なのか、それは今後の捜査で明らかになるはずです。