失点が少ないのも岸田政権の高支持率の原因でしょう。これまで岸田内閣が何か失敗したかと言えば、大きな失敗はありません。実は岸田政権は「官邸官僚」がかなりしっかりしています。首席秘書官の嶋田隆氏は元経産事務次官の切れ者ですし、財務省出身の秘書官・宇波弘貴氏は、財務省の本流・主計局の次長からの起用です。他のメンバーを見ても、各省のエース級が起用されています。
岸田首相と同じ開成高校出身者のネットワークも政権をしっかり支えています。こうした陣立てがしっかりしているので、岸田内閣にはあまり失敗がありません。知床沖で遊覧船が消息を絶った時にも、その日のうちに訪問先の熊本から自衛隊機で帰京しています。本当にそこまでの対応が必要かはともかく、国民に向けての安心感の提供にはなっています。過去には、大きな事故が発生したとの連絡を受けながら、ゴルフを続けていたことが発覚して批判を受けた首相もいましたが、こういう危機管理面で岸田首相は実にそつがないのです。
ロシアやウクライナへの対応についても、大きく得点を稼いでいるわけではありませんが、ちゃんと国際社会と歩調を合わせて、それなりのことをやっています。
「改革疲れ」したところに登場したホッとできる政権
高支持率の背景をもう少し短期的な面から分析すれば、安倍政権や菅政権で、日本人全体が「改革疲れ」をしてしまったという面もあると考えられます。安倍晋三首相の時代は、華々しくアベノミクスや安保法制をぶち上げましたが、反面、それを批判する野党や一部社会との対決姿勢を隠そうとせず、力ずくで改革していこうという匂いをぷんぷん漂わせていました。
菅義偉首相の場合は、政権についていたのはわずか一年でしたが、この間に、「ワクチン接種は一日100万回だ」といって河野太郎さんのように激しい人をワクチン担当相に起用してゴリゴリ推し進め、さらに携帯電話の料金引き下げや、少子化対策の一環として不妊治療の保険適用実現や子ども家庭庁の創設、デジタル庁の創設など、ガンガンガンガンと続けざまに改革を打ち出していきました。そして、それによって敵も次々登場するという中でまさに奮闘していました。
その方向性について賛否はあるでしょうが、安倍元首相や菅前首相は、社会の課題を解決し、日本を前進させようと努力したのは確かです。時には「強引」とも言える方法で、「剛腕ぶり」を発揮してきました。