こんな調子ですから、面と向かって、「あなたは岸田内閣を支持しますか、岸田首相を支持しますか」と聞かれると、みな「うーん」という顔をするのですが、その実、世論調査の対象になると「支持する」と答えているのです。私は、このなんとなく支持している人たちを「隠れ岸田」と呼んでいるのです。
トランプ氏の場合はどうでしょうか。アメリカで「あなたはトランプ氏を支持しますか」と尋ねられれば、はっきり「支持しない」と断言する人や、言葉を濁す人が多いはずです。下品だし、差別的発言は多いし、政治的主張も偏っている。大っぴらに「支持している」と公言するのは常識人として憚られる、と思っている人が多いからです。でも実は「隠れトランプ」と言われている、本音ではトランプ氏に共鳴している層がそれなりにいるのです。
大統領だった当時、コアな支持者たちからなる岩盤支持層があり、そこに少なからぬ「隠れトランプ」がいた。そのため、およそ半数の国民からは明確に「嫌い」と言われながらもトランプ氏は大統領の座に座り続けることが出来ました。私は、コロナがなければ、再選されていた可能性もかなり高いとみています。
失点少ない岸田首相
このようにアメリカの社会全体で見れば、「(多少下品ではあっても)はっきり物事を言って実行してほしい」と本音のところで望んでいる人たちが多いのです。日本はそうではありません。「徹底的にやらなくていい」「ほどほどでいい」「多くの人の意見を聞いて、ちょうどいい塩梅の落としどころをみつけてほしい」。そんな本音を持っている人が多いのです。
日本という社会は、それこそ聖徳太子の時代の十七条の憲法の中で「和を以て貴しとなす」と書かれているように、大昔から、「互いの意見をぶつけ合って白黒つけよう」というよりは、「みんなの意見をよく聞いたうえで、みんながまあまあ納得できる線でまとめていこう」ということが好きな国民性だと思われます。
そう考えると、「聞く力」の岸田首相のスタイルは、中長期的にみた日本の社会的あり方に非常にマッチしていると言えます。これが高支持率の要因だと思います。