スリランカ中央銀行のナンダラール・ウィーラシンハ総裁(写真:AP/アフロ)

(在ロンドン国際ジャーナリスト・木村正人)

[ロンドン発]経済危機に揺れるスリランカが1948年の独立以来、初のデフォルト(債務不履行)に陥った。スリランカ中央銀行のナンダラール・ウィーラシンハ総裁は19日、「債務が再編されるまで支払いはできない」と“先制デフォルト”を宣言した。

 コロナ危機とエネルギー危機が起きる以前から、スリランカは無謀なインフラ整備で債務を膨らませてきた。

「債務の罠」にハマったスリランカ

 ウィーラシンハ総裁は「インフレ率は30%前後。変動が激しい食料品やエネルギー価格を含むヘッドラインインフレ率は今後数カ月で40%程度にハネ上がる」と警戒する。スリランカの主要金利はすでに14.5%に引き上げられている。無償で支給されるパンに人々は殺到し、ガソリンを求める列は何キロメートルも続く。街頭では政府への抗議活動が吹き荒れる。 

5月19日、スリランカの首都コロンボにあるガソリンスタンドの前には、燃料を求める三輪タクシーの長い車列が出来ていた(写真:AP/アフロ)

 スリランカはアジアと中東・アフリカを結ぶシーレーン(海上交通路)の要衝だ。南端のハンバントタ港は2017年から99年間にわたり中国国有企業に貸し出された。インフラ整備のため中国から湯水のようにお金を借りたものの結局、思ったような利益は出ずに返済不能に陥り、施設や土地を明け渡さざるを得なくなる「債務の罠」の典型例だ。

 ドバイ、シンガポール、香港など金融センターに匹敵する港湾都市を目指す「コロンボ・ポート・シティー」の埋め立て工事のため、スリランカは別の中国国有企業から14億ドルの投資を受けた。見返りにその43%が99年間にわたりリースされた。債権者は中国だけではない。米ウォール街やその他の機関投資家からの借り入れも膨張している。