スリランカのデフォルトで白日の下にさらされた一帯一路の嘘
米政府が運営する海外放送「ボイス・オブ・アメリカ」によると、スリランカの対外債務は510億ドル。中国の習近平国家主席のインフラ経済圏「一帯一路」プロジェクトに費やされた110億ドルも含まれる。スリランカ政府は返済延期と25億ドル相当の緊急支援を中国に求めたが、中国は3100万ドルの「緊急人道支援」や人民元スワップを提供しただけだ。
外国から巨額資金を借りて債務が膨らんだところに、コロナ危機で外貨を稼ぎ出す観光業が大打撃を受けた。コロナ復興による需給逼迫、サプライチェーンの停滞、高騰するエネルギー価格はウクライナ戦争でさらに押し上げられた。燃料・飼料・肥料不足による食料品価格の上昇、インフレ高進が低所得者・貧困層の生活を直撃する。
スリランカがデフォルトに陥れば、黙っていても港湾施設など戦略的な重要インフラが中国の手中に落ちる。地政学的な競争に注目する英シンクタンク「カウンシル・オン・ジオストラテジー」アソシエイト研究員で、英外交官として香港返還に関わったマシュー・ヘンダーソン氏は「スリランカの危機は一帯一路のリスクを浮き彫りにした」と指摘する。
ヘンダーソン氏によると、途上国における一帯一路の共同開発プロジェクトは米ウォール街の強欲で冷徹な資本主義のアプローチよりはるかに温和で、人と人とのつながりを重視しており、全体的に見て良いことだと中国は強調してきた。「しかし、これは真っ赤な嘘だとスリランカのデフォルトで白日の下にさらされた」と言う。