中国の「真珠の首飾り」戦略

 中国がインド洋諸国で港湾インフラを支援する動きは「真珠の首飾り」戦略と呼ばれる。「インド太平洋地域で中国はガバナンス(統治)やレジリエンス(困難な状況に遭遇してもすぐに立ち直る回復力)、政治的不安定さの面で問題を抱える国々を標的にしてきた。スリランカはそれに当てはまる」(ヘンダーソン氏)

 中国のインフラ開発プロジェクトは債務国の経済的な自立性を失わせる。生産能力を多様化できず、資源輸出に依存する国々は中国依存症を深めていく。その一方で、中国は経済だけでなく、政治や軍事面でも影響力を増大させる。「米欧がウクライナ戦争に集中している間に中国が自らのアジェンダを加速させているのはもはや疑いようがない」

「中国は、狙った国が拒むことができないような提案をして、これまでよりはるかに強引な方法で“取引”を迫っている。融資や投資にとどまらず、台湾との関係を断つよう圧力をかけたり、西側からの影響を排除しようとしたりしている」。こう語るヘンダーソン氏はもう一つの「真珠の首飾り」にも懸念を深める。

 中国は4月19日、南太平洋の島国ソロモン諸島と最低5年間の安全保障協定を正式に締結した。ソロモン諸島のマナセ・ソガバレ首相はわざわざ「条約」と表現した。

 協定の内容はまだ明らかにされていないが、漏洩した協定案には「中国は自らの必要性に応じて、ソロモン諸島の同意を得た上でソロモン諸島に寄港し、兵站補給を行うことができる」と記されていた。社会秩序の維持や災害救助のため、中国から警察や軍人を要請できるとの内容も含まれるとされる。