女流名人戦で仲邑菫二段と局後の検討をする藤沢里菜女流四冠(撮影:内藤由起子)

 今年4月に行われた囲碁女流名人戦は大きく報道された。史上最年少の13歳でタイトル戦挑戦者となった仲邑菫二段が注目されたためだが、実は相手のタイトル保持者、藤沢里菜女流名人もとてつもない実力、実績を持つ人物だ。

 5つある女流タイトルのうち4つ(女流本因坊、女流名人、女流立葵、女流最強)を持つ藤沢女流四冠はまだ23歳。これまで獲得したタイトルは21(女性史上2位)を数え、女性棋士の第一人者であるだけでなく、男性棋士に交じってもトップ棋士のひとりとして名を挙げられる。そんな藤沢の強さの秘密を紐解いていきたい。

記者会見をする藤沢里菜女流四冠(撮影:内藤由起子)

「男性のトップ棋士と遜色ない」と井山裕太名人も太鼓判

 囲碁は男女の差が極めて少ないマインド(頭脳)スポーツだ。対局は男女関係なく同じ土俵で打たれている。「棋士」と「女流棋士」が区別されている将棋界とは違い、囲碁の「女流棋士」というのはただ性別を強調しているだけで、プロの肩書きは全員「棋士」なのだ。女性限定の女流棋戦はあるが、それは年齢制限のある若手棋戦などと同列に扱われている。

 男女の区別がないとはいえ、これまで(男女一緒の全棋士参加の)一般棋戦で優勝したことがある女性は、2000年に韓国で「国手」のタイトルを獲得したゼイ(くさかんむりに内)廼偉(ノイ)九段のみだった。近年、やっとゼイ九段に続く女性が現れるようになってきたが、そのひとりが藤沢なのだ。

 藤沢は2020年に若手棋戦「若鯉杯」でトップ棋士を次々となぎ倒し、女性初の優勝を飾った。「十段戦」では現在棋士序列一位の一力遼棋聖を破って本戦入りしベスト8までコマを進めた。また2019年には、一流棋士の証である名人戦リーグ入りまであと1勝と迫っている。

 井山裕太名人も「藤沢さんは男性のトップ棋士と遜色ない。いつ一般タイトルの挑戦者になってもおかしくない」と、その実力に太鼓判を押す。