近藤誠也七段を破り「第71期王将戦」の挑戦者に決まり、記念撮影に応じる藤井聡太竜王 写真=毎日新聞社/アフロ

(田丸 昇:棋士)

来年の名人戦挑戦者は?

 2022年の第80期名人戦七番勝負は、渡辺明名人(棋王を合わせて二冠=37)に対して、斎藤慎太郎八段(28)が昨年に続いて挑戦している。

 名人戦第1局は4月6日、7日に東京・文京区「ホテル椿山荘東京」で行われ、渡辺名人が先勝した。

 斎藤八段は「西の将棋王子」という愛称があるイケメン棋士。トップリーグのA級順位戦で、1期目と2期目に初めて連続優勝した実力者だ。今年の名人戦第1局は不本意な内容で完敗したが、勝負は始まったばかりである。第2局以降の巻き返しに期待したい。

 渡辺名人は今年の名人戦に際して、「第一線で活躍できるように実力を伸ばせるのは、以前は45歳くらいまでと思っていました。でも藤井さん(聡太五冠)が出てきてからは、長期的なことは考えていられません。とりあえず目の前の課題に取り組みます」という内容のことを語った。

 渡辺は来年の名人戦挑戦者のことを、すでに視野に入れているようだ。その棋士こそ藤井聡太五冠(竜王・王位・叡王・王将・棋聖=19)である。

名人を獲得するまで最短で5期

 名人戦の予選リーグに当たるのが「順位戦」。最上位のA級~B級1組~B級2組~C級1組~C級2組と、階段状に5クラスに分かれている。

 名人戦以外の竜王戦など7タイトル戦は、勝ち続けていけば1期でタイトルを獲得することができる。しかし名人戦では、順位戦で連続昇級していっても、名人を獲得するまで最短で5期(年)かかる。

 藤井五冠は2017年度の順位戦に初参加した。それ以来、C級1組で2期在籍したが、ほかのクラスは1期で昇級し、2022年3月にB級1組からA級に昇級した。

 藤井の5期にわたる順位戦での通算成績は49勝3敗(.942)。これは突出した勝率である。

 ちなみに、C級2組からA級まで連続昇級した加藤一二三・九段(82)の順位戦での通算成績は40勝8敗(.833)。同じく連続昇級した中原誠十六世名人(74)は44勝5敗(.898)。