〈誤算2〉NATOの拡大
プーチンがウクライナ侵攻を命じたのは、ウクライナがNATOに加盟するのを阻止するためであった。この問題は、3月5日の本コラム<プーチン、NATOへの敵愾心の原点は「クリントンの裏切り」>(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69128)で詳しく解説しているが、ベルリンの壁崩壊後に、ドイツが統一するに際して、「NATOは1ミリたりとも東方に拡大しない」という約束を西側が守らなかったことにある。
ロシアにとって「ロシア文明圏の最後の砦」とも言えるウクライナがNATOに加盟することだけは絶対に阻止するという決意は、プーチンが再三公言してきていた。そこに、あたかも「傷ついた熊」を挑発するように、アメリカの支援を背景に挑戦したのがゼレンスキーである。
実は、これと対照的な態度を維持してきたのがフィンランドであった。
ノルウェーやデンマークは1949年のNATO発足以来の加盟国であるが、スウェーデンは中立政策、フィンランドは米ソ冷戦下ではフィンランド化と呼ばれるソ連寄りの外交政策を堅持した。
ソ連邦の崩壊で、フィンランド化は終わったが、それでも反ロシアの姿勢はとらなかったのである。「冬戦争」(1939年11月〜1940年3月)などソ連と戦火を交えた経験が、そのような慎重さを生み出したと言える。スウェーデンもフィンランドも1995年にEUに加盟したが、NATOには加盟していない。
それは地政学的配慮からであるが、ウクライナへのロシアによる武力威嚇を見て、今年の初めにフィンランドのニーニスト大統領はNATO加盟という選択肢があることを明言して、ロシアを牽制した。