この論理を掲げて「特別な軍事作戦」を展開することは、多くのロシア国民のナショナリズムの琴線に触れる。それ故に、プーチン政権は80%を超える支持率を記録しているのである。

 日本の一部で見られるような「ロシア国民の不満が爆発して、プーチンが失脚する」というような“希望的観測”は慎まなければならない。経済制裁など西側のロシア封じ込めが強化されればされるほど、ロシア国民は、それに耐え、団結する。

 現代のロシア皇帝(ツァーリ)の言葉は「聖なる」言葉であり、ロシアの大衆はそれに従うのである。それを、「プロパガンダの成果だ」と断言するのは、ロシアを正しく理解しないからである。

〈誤算1〉予想外のNATOの軍事支援

 4月24日、アメリカのブリンケン国務長官とオースティン国防長官は、ウクライナの首都キーウを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談して、軍事支援をさらに強化することを約束した。また、アメリカの外交官もキエフに復帰させるという。

 このように、アメリカを中心とするNATO諸国はウクライナへ兵器を送るなどの支援を継続しているが、注目に値するのは、ドイツの方針転換である。これまでドイツは、人道支援や医療機器の提供のみを行ってきたが、それは、紛争地に殺傷力のある武器を供与しないという方針があったからである。日本の武器禁輸三原則のようなものである。

 しかし、ウクライナ支援を求める同盟国やドイツ国民、またウクライナ政府の批判の声に押される形で、これまで控えてきた武器供与を行うことにしたのである。具体的には、「ゲパルト対空戦車」である。

 これまでも、NATOは、対戦車ミサイルのジャベリン、携帯型地対空ミサイルのスティンガー、自爆型無人ドローンなどを供与しており、それは、操作も簡単で、すぐに習熟でき、しかも効果は抜群である。