筆者の知人の韓国人記者は、「文在寅大統領の狙いは結局は成功しないだろう」と予想する。

失われた法治国家としての矜持

「仮に検捜完剥法が通過しても文大統領や李在明氏をめぐる疑惑を捜査できないわけではない。第一に、優先的に政権関連捜査を引き継ぐことになる警察は、検察よりも外圧に弱い組織だ。そして現警察庁長官は7月に交代するが、現在3人いる候補の中から後任を任命するのは尹錫悦大統領だ。そのため3人の候補は捜査能力を立証するため、文政権関連疑惑を必死に捜査するだろう。

 第二に、将来的に6大犯罪捜査を担当する『重大犯罪捜査庁』を新設することになっているが、法務部長官傘下に置くことになる。現在、法務部長官に内定している韓東勲(ハン・ドンフン)前最高検察庁部長は『尹大統領より優れた検察官』と評価されており、彼が指揮する重大犯罪捜査庁は前政権の不正を隅々まで捜査するだろう。

 第三に、法務部長官は常設特検制度を活用して捜査を開始することができる。疑惑があるたびに特任検事を任命し、捜査を命令できる権限を持っているのだ」

 彼の言うように、法改正がなされても、文在寅大統領や李在明氏の疑惑追及は遂行されるかもしれない。だが、検察の捜査権がもぎ取られる状況に変わりはない。

 大統領退任後は「田舎で静かに暮らしたい」という“主君”の希望のために、検察から捜査権を取り上げようとする共に民主党の必死の目論見は、これから犯罪被害に遭う大勢の一般国民に莫大な被害を与えることになるだろう。文在寅政権の5年間で、韓国は法治主義国家としての根幹もその精神も失ってしまったようだ。