尹錫悦政権が発足した瞬間、検察の刃は文在寅政権と共に民主党に向けられ、文在寅政権がこの5年間、必死に蓋をしていた「積弊事件」が続々と暴かれ、共に民主党はそれこそ再起不能の危機に直面する可能性が極めて高い。共に民主党にしてみれば、生き残るためには検察の刀をどうしても奪わなければならない状況なのだ。

水面下で繰り広げられる工作

 それだけに、共に民主党の議員たちも必死になっている。

 元蔚山警察庁長官で現在は共に民主党所属の国会議員・黄雲夏(ファン・ウンハ)氏は警察の元同僚たちに協力を求める手紙を送ったが、そのなかで「検捜完剥法が可決されれば、検察の重大犯罪捜査権を蒸発させることになる」と法案の狙いを漏らしたという。

 また無所属の梁香子(ヤン・ヒャンジャ)議員に対して、共に民主党は「検捜完剥法を処理しなければ、文在寅大統領府関係者20人が検察捜査で刑務所に入る」と述べ、民主党への復党と引き換えに協力を求めてきたが、梁議員はこれを断り、その内容を暴露した。このように、国会議員の間で様々な工作が繰り広げられているのだ。

 だが、あまりにも身勝手な共に民主党の振る舞いに世論の反発が強まってくると、身内のはずの左派系法律団体や党内からも批判の声が上がり始め、共に民主党は一歩後退を余儀なくされた。民主党は、元の検捜完剥法案に代わって、自党出身の朴炳錫(パク・ビョンソク)国会議長の仲裁案を受け入れるという意思を明らかにした。

 仲裁案の核心は、(1)検察の直接捜査権は経済、腐敗犯罪だけに限定し、これも1年6カ月後には完全に廃止される。(2)国会が今後1年以内に「重大犯罪捜査庁」を発足させる立法措置に乗り出すという2つだ。

 この仲裁案が4月中に国会で可決されれば、文在寅大統領は5月3日の閣議で法案を公布し、3カ月後に施行されるものとみられる。だが野党「国民の力」がこの仲裁案を受け入れたことに、金浯洙(キム・オス)検察総長や最高検次長検事、ソウルや釜山など全国6高検のトップが辞意を表明、抗議の意思を鮮明にした。事態はまだ流動的だ。