ロシアの国民性:忍従と持久力

 4月12日、プーチン大統領は、極東アムール州のボストーチヌイ宇宙基地で、ベラルーシのルカシェンコ大統領と共同記者会見を行った。これは2月24日のウクライナ侵攻以降初の記者会見であったが、プーチンは、経済制裁に対して「困難な状況下でロシア人は常に団結する。われわれはこの困難に対処していく」と述べた。また、「大国ロシアを孤立させようとする試みは失敗する」と強調し、ウクライナでの軍事作戦の目標が達成されると自信を示した。また停戦交渉については、3月29日のイスタンブール協議の合意をウクライナ側が翻したとして、行き詰まっているという認識を示した。

 この発言に見られるのは、資源大国であることの強みを誇示し、同時に命令には絶対に服従し、苦難を耐え忍ぶ国民性が追い風になっているという確信である。

 ロシアでの独立系の世論調査で、プーチン支持率が83%と高いのは、単に政府のプロパガンダが効いているのみならず、ロシア人のナショナリズムを刺激しているからである。ロシア国民は、現代のツァーリ、プーチンに絶対服従なのである。

 ハンス・モーゲンソーは、その古典的名著『国際政治』の中で、ロシアの国民性に触れて、1851〜52年にロシアに駐在したアメリカ公使の言葉を引用している。

「ロシア人が世界を征服する運命にあるという奇妙な迷信が、ロシア人の間で行き渡っている。こうした運命観とその光栄ある報酬という考えに基づいて軍人に訴えれば、それが無駄に終わることはめったにない。最大の苦境のまっただなかにおかれているロシア兵を特徴付けている、あの驚くべき忍従と持久力は、この種の甘受に原因があった」

 これは、現在のロシア人にも十分に当てはまるものである。

 過去数世紀にわたって、軍事優先のために消費財が絶望的に不足し、苦しい生活を続けてきたロシア国民にとって、ゆとりが出てきたのはこの20年のことである。

 プーチン政権が簡単に崩壊すると思わないほうがよい。

 プーチン大統領は、第二次世界大戦のロシアの対独戦勝記念日の5月9日までに東部ウクライナを制圧し、勝利宣言したいところだが、戦況は予断を許さない。今の状態では停戦合意も難しいし、戦後処理にも時間がかかる。プーチン失脚などに希望を託すのは危険である。