傭兵組織としての実績にはムラ
儲けの大きな事業にもかかわらず、ワグネルの実績には波がある。
2014年以降は、ウクライナのドンバス地方でプーチン氏の目標達成に貢献した。
シリアでは、過激派組織「イスラム国(IS)」からパルミラを奪還するうえでワグネルの傭兵が重要な役割を担い、ロシア軍がバシャル・アサド大統領の体制を支えることに貢献したと見られている。
だが、2019年にモザンビーク北部でジハード主義者と戦うためにワグネルが雇われた時には、戦闘員が少なくとも7人殺害されたところで早々に撤退した。
リビアでは、約1000人のロシアの傭兵が反体制派のハリファ・ハフタル総司令官のために暫定政府と戦った。彼らは政府を倒せず、一般市民の殺害など戦争犯罪を重ねたと非難されている。
中央アフリカ共和国では、ワグネルの傭兵およそ2000人がフォスタンアルシャンジュ・トゥアデラ大統領を支えているが、大統領を倒そうとしている反体制派の掃討にはほど遠いのが実情だ。
この半年間で、約1000人のワグネル戦闘員がマリに到着した。
すでに国連の報告書で、マリ軍の兵士と一緒になって約30人をひもで縛り、ガソリンをかけて焼き殺したとして非難されている。
人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチは、ロシア人の傭兵がマリ軍と一緒になってイスラム主義者の戦士と疑われた約300人を即座に処刑したと述べており、この事件を「10年に及ぶマリの軍事紛争で報告された中でも最悪の残虐行為」と形容している。
その間にも、ジハード主義者は進軍を続けている。
当初の目標が思わぬ方向に発展
ワグネルがウクライナに到着したとの一報が流れたのは、侵攻開始のほんの数日後のことだった。
ウクライナの秘密情報機関は、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領やほかの政府幹部を暗殺するために傭兵が派遣されたと発表した。
しかし、独立機関による確認はなされておらず、ワグネルを追跡しているアナリストやジャーナリストも、慎重さが求められるそのような任務に傭兵が使われることはまずないと見ている。
また、ロシアやベラルーシ、クリミアから侵入したロシア兵と傭兵が一緒に戦闘に参加しているわけでもなさそうだ。
ウクライナはロシア兵を多数捕虜にしているが、ワグネルとつながっている兵士の情報は2人分しか公表していない。
この2人は、確かに昔はワグネルに加わって戦ったが、ウクライナにはロシアの正規軍と一緒に来たと話している。