国連の安全保障理事会でビデオ演説するウクライナのヴォロデミィル・ゼレンスキー大統領(4月5日、写真:ロイター/アフロ)

◆特別公開中◆
(*)本記事は、プレミアム会員向けの特別記事ですが、期間限定で特別公開しています。(この機会に、JBpressのすべての記事をお読みいただける「
JBpressプレミアム会員」のご登録をぜひお願いいたします。)

(英エコノミスト誌 2022年4月2日号)

前編はこちら(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69590

 ウクライナ政府は様々な目的を追求するためにSNSを使うようになった。

 3月17日、ドミトロ・クレバ外相は「ネスレのポジショニング」――健康そうな子供の写真――と「ネスレのポジション」――死んだ子供の写真――を対比させるミーム風のイメージを投稿することで、ロシア事業の全面停止を拒む食品大手ネスレに恥をかかせようとした。

 デジタル省はテレグラム上にチャットボットを立ち上げ、市民がロシア軍部隊の動画と位置情報を送れるようにした。

 1日当たり1万件前後のメッセージが舞い込んでおり、ウクライナ陸軍が伝統的な諜報を補完するために利用している。

 デジタル担当大臣のフョードロフ氏は「彼ら(ロシア軍)がどこにいようとも、我々には見えている」と言う。

 政府は、避難用の列車の情報から英雄的な兵士についての物語まで、ありとあらゆる情報を拡散するためにSNSを利用している。

 事実でなかった時でさえ、物語が強烈な印象を与えることに変わりはない。

 黒海の小島の兵士たちは例の有名なセリフを口にした後、ウクライナ政府が当初報告したように殺害されたわけではなく、捕虜になっていた。だが、殉教者としての評判は何ら傷つかなかった。

すべての市民が情報戦士

 政府は多くの支援を受けた。

 ウクライナ全土で、PR専門家やデザイナー、その他のメディア関係者が侵攻開始から数時間内に誕生したボトムアップ型のネットワークを介して団結した。

 ウクライナ政府の顧問で、それぞれ具体的な目的を持った複数のチームの調整役を務めるリウボフ・チブルスカ氏は「最近では、すべての人が情報戦士だ」と言う。

 あるチームはロシア人を目がけたコンテンツをパッケージにし、別のチームは国内の聴衆向けに愛国的な動画を制作する。3つ目のグループはTikTokに特化し、4番目のグループはミーム制作に勤しむ。

 また別のチームは、将来の戦争犯罪裁判を期待して、SNSの写真や動画をアーカイブ化している。