偽情報作戦のターゲットは欧米以外

 西側のユーザーのニュースフィードでは親ウクライナのメッセージが圧倒的に多いが、これは情報戦争が終わったことを意味しない。

「ウクライナが情報戦争に勝ったという話は慢心であり、必ずしも何か実証的なものに裏付けられているわけではない」とミラー氏は主張する。

 独立系の研究者らは、SNSがデータを共有しようとしないために、情報がオンライン上でどう拡散しているのかを評価するのが難しいと話している。

 オーガニックなコンテンツ、そして特にTikTokのような比較的新しいプラットフォームについては、特にこれが当てはまる。

 SNS分析ツールを運営するクラウドタングルの共同創業者、ブランドン・シルバーマン氏は「こうしたプラットフォームを組織的かつ信頼できる形で見渡し、情報のエコシステム(生態系)がどうなっているかを判断する方法がない」と嘆く。

ロシア国内では情報統制を強化

 ロシア国内では、プーチン氏は情報の流れを引き締めることで、物語を厳重に統制している。

 ツイッター、フェイスブック、インスタグラムはすべて禁止された。TikTokのユーザーは新しいコンテンツを作ることができない。

 戦時検閲法によって、戦争を戦争と呼ぶことが最大で15年の懲役刑を科される犯罪行為になった。

 ロシア当局はテレグラム上に、「正しくない情報」を拡散する人を市民が通報するチャットボットを立ち上げた。

 ロシアの偽情報キャンペーンはアジア、アフリカ、中東地域を標的にし、以前から存在していた反西側、反米感情につけ込むメッセージを制作しているようだとミラー氏は言う。

 デモスのチームがツイッター上で親プーチンのハッシュタグを広めているアカウントに意味解析をかけたところ、南アフリカとインドで圧倒的多数の活動が見られることが分かった。

 アジアでは、今回の紛争に対する世論が欧米諸国ほど決定的に反ロシアではない。

 また、南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領は最近、NATOが東方拡大に対する「警告を聞き入れていたら、戦争は避けられたかもしれない」とツイートしている。