クリエーティブ系の専門職から成る別のネットワークに所属するPRストラテジスト、セルヒイ・ディドコフスキー氏は、狙いの一端は、世界がウクライナに関する情報をウクライナから直接得るようにすることだと説明する。

「パリでエッフェル塔を眺めながらクロワッサンを食べているフランス人の男性に、ウクライナ軍が彼を守っているからこそ、そうしたことができていることを理解してもらいたい」

悲惨な防空施設をユーモラスに案内

 近年、ウクライナが地政学的に西側へシフトしたように、オンラインの生活も西を向いた。

 ロシアが2014年にウクライナ東部へ侵攻した時、ウクライナのインターネット文化は経済全体と同様にロシア志向だった。最も人気の高いSNSはロシアのプラットフォーム「VK」だった。

 ここ数年で、ウクライナのハイテクシーンが急激に発展した。多くの開発者とデザイナーが欧米ハイテク企業の仕事をしている。

「グローバルなインターネット向けにコンテンツをデザインするノウハウを持った人間が大勢いる」とディドコフスキー氏は言う。

 ウクライナのネットユーザーは共通のデジタル言語で欧米の視聴者に語り掛ける。

 例えば「@valerisssh」の名で投稿する旅行写真家は、ユーモアと哀愁をちりばめながら、戦禍のチェルニヒウでの暮らしにTikTokミームを当てはめた動画を投稿することで一大センセーションになった。

 ある動画では、ユーザーがパスタを料理するTikTok動画によく使われるイタリアの曲を流しながら、家族の防空施設をフォロワーに案内している。

西側市民の心を動かす

 これが西側市民の心をつかむことに貢献した。

 米国人はもともとロシアを嫌う傾向があり、すぐにウクライナの味方についた。

 昨年末時点では、米国人の55%がウクライナのことを「友好的」ないし「同盟相手」と見なしていた。

 プーチン氏の爆弾が降り始めた2週間後には、その割合が80%以上に達し、往年の同盟国であるフランスや日本について同じことを考える人の割合を上回った。

 欧州の外交官らは、欧州でも似たような世論の変化があり、より厳しい対ロ制裁とウクライナ難民に対するよりリベラルなアプローチへの支持が高まったと話している。