リアルタイムの物語の発信は、ウクライナ国民の間で士気を高めることにも役立った。
「我々はウクライナに関する新しい物語が生まれているところを目の当たりにしており、これが我々に強さと勇気を与えている」とチブルスカ氏は話す。
ロシアはいまだにチラシにラジオ?
偽情報のパイオニアとしての評判にもかかわらず、ロシアは物理的な戦場と同じくらいウクライナ国内での情報戦でもつまずいた。
ロシア占領軍は「同志」に訴えかけるチラシを配り、プーチン氏の演説を放送するために地元のラジオ局を乗っ取った。
「彼らは第2次世界大戦のクズみたいなものを使っている」
ウクライナの著名ジャーナリストで、現在ロシア軍の支配下にある南部の都市ヘルソン出身のクリスティーナ・ベルディンスキフ氏はこう話す。
「情報はもはや、そんな形で広まっていない」
占領下にある都市の住民は今も、オンラインおよびウクライナ政府のアプリ「Diia」経由でウクライナのテレビやラジオを受信している。
抗議活動を企画し、ロシア占領軍の録画を共有するためにテレグラムを使う。
武器も持たずにロシア軍兵士に挑む抗議者たちの動画は一気に拡散した。たった一人で、素手で戦車を止めようとしている男性の動画もあった。
西側諸国では、ロシアが描く物語があまり普及しない。情報を操作するには、現実が鮮明すぎるのかもしれない。
また、欧米のプラットフォーム企業はロシア国営メディアによって拡散されている偽情報に対して、より厳しい態度を取っている。
だが、英国のシンクタンク、デモスのカール・ジャック・ミラー氏は、ロシア側がそもそも欧米の視聴者にリーチする努力をしていないと見る。