プーチン大統領が傭兵組織を容認
ワグネルの戦闘員は、ロシア国防省とつながりのある特殊な部局が発行したパスポートを使うことが多い。
2018年に元ロシアスパイのセルゲイ・スクリパリ氏を英国で暗殺しようとした2人の男のパスポートも、この部局が発行したものだ。
また2020年に、ベラルーシが意外にもワグネル・グループに所属すると見られるロシア人33人を逮捕した時には、プーチン氏が個人的に関心を寄せ、身柄が釈放されるよう動いた。
米コロンビア大学バーナード・カレッジのキンバリー・マルテン教授は「ワグネルは全く独立していない」と総括している。
ロシアの傭兵組織のすべてがそうであるように、ワグネル・グループも表向きは存在しないことになっている。ロシアの法律は傭兵の活動を容認していないからだ。
しかし2018年にプーチン氏がその存在を認め、ロシア国外で活動するなら問題ないと示唆した。
「彼らには、世界の好きなところで働いて事業利益を追求するあらゆる権利がある」と述べた。
これでは、シリアでの拷問をはじめとする行動についてワグネルの部隊に責任を問うことにロシア当局がほとんど関心を示してこなかったとしても、さほど不思議はない。
中東・アフリカで荒稼ぎ
ワグネルでは、組織の創設以来、約1万人が戦闘員として働いたと見られている。
その大半は、戦闘経験を持つ元ロシア軍兵士だ。
ワグネルの採用担当者が好むのは、特殊な軍事スキルを持ち、かつ犯罪歴のない人材だという。報酬は高く、アフリカの傭兵は月4000ドルもらっている。
ワグネルの傭兵はロシアの地政学的な利益に資する任務のために派遣されてきたが、組織はその過程でかなりの利益も稼いできた。
ワグネルは中央アフリカ共和国やマリなど進出先の大半で、その国の政府から支払いを受けている。
契約のうまみが増すように、報酬の上乗せとして、金鉱山やダイヤモンド鉱山の支配権がワグネルやその最大の支援者エフゲニー・プリゴジン氏とつながりのある企業に提供されることもある。