誰にでもできるわけではなかった飲食バイト

 中高年男性が副業として取り組めるアルバイトは、それほど種類が多くない。まして、月に数回しか入れないとなると、さらに選択肢は狭まる。その中で、居酒屋の単発バイトはメリットが多いように感じる。

 まず大都市圏の場合、居酒屋は駅から近い。単発バイトの求人は物流倉庫や食品工場などが多いが、これらの仕事は駅から遠く、交通の便が悪いのだ。

 しかし、居酒屋の多くは駅近だ。電車で行けば、道に迷うこともほとんどない。時給も1000円以上、ターミナル駅周辺だと1300~1400円と高時給で(東京都内の場合)、給料が封筒入りの現金でその場で渡されることも多い。

 ただし、Cさんのような経験者でなければ採用は難しい。実際に筆者も単発の飲食バイトにいくつか申し込んでみたが、「経験者ではない」という理由でいずれも断られた。

 一見単純そうに見える飲食の仕事だが、「丸いお盆にドリンクを乗せて運んだことがある」「ドリンクを作れる」といった経験がまるでないと、初心者は取り合ってもらえない。チェーン店にはマニュアルがあり、それに従えば誰でもできそうだが、ズブの素人が入ると、慣れるまでに最低1カ月は時間がかかるという。

 Cさんのような経験者は、初めての現場でも「1教えてもらえば、10のことはできる」と言われる。それだけ、経験は大きな「強み」になるのだろう。

 とある飲食店の店長に聞いたところ、中高年のサービス業経験者は、若い人より頼りになる存在だという。

「学生のアルバイトは、社会人の礼儀から教えなければいけないから大変です。飲み物の置き方をお客様に注意されただけで、舌打ちするような子もいますからね。その点、社会人としてのマナーがしっかりしている中高年は安心して任せられます。ただし採用できるのは、笑顔や元気な返事ができる経験者に限りますが……」