従来型のフォトジャーナリズムやテレビと共存するソーシャル写真やソーシャル動画は、部外者が目にする戦争の映像により生々しく、重苦しく、かつ人間的な色合いを加える。

「ニュース映像を見れば大まかなことは分かる。でも、私が(オンラインで)見ている画像の多くは、パンを買うための行列のような、戦争がもたらした日々の生活風景だ」

 調査会社ケピオスのサイモン・ケンプ氏はそう語る。

「そういう画像の方がはるかに『ヤバい、あれが自分だったかもしれない』という気になる。より人間的な画像になる」

大統領以下、政府高官が巧みにSNSを活用

 ウクライナの人々はこの新しい情報環境に巧みに対応してきた。元テレビスターで、カリスマ性があり、SNSに精通したゼレンスキー氏が政治指導者になっていることも追い風になる。

 ゼレンスキー氏のメッセージは、大統領としての公式的なアプローチから離れ、SNSならではの親近感を重視していることが多い。モスクワにいる年長の地味な敵とは対照的だ。

「(ゼレンスキー氏にとって)テクノロジーを使うのは自然なことだ」

 2019年の大統領選挙でデジタル選挙運動を取り仕切ったフョードロフ氏はこう言う。

「大統領はシェアしたい、言葉を拡散したい、自分の感情を伝えたいと思っている――普通の人と同じように、だ」

 ウクライナでは国中の政府高官がアプローチを採用している。

 前線になっているウクライナ南部ミコライウ州のビタリー・キム知事は動画を自撮りし、ウクライナとロシアの両国で広く利用されている対話アプリ「テレグラム」の自分のチャンネルに定期的に投稿している。

(後編は明日掲載します:JBpress編集部)