戦争の帰趨をも左右

 だが、戦争の記録、経験、理解のされ方をSNS(交流サイト)が変えていること、ひいては、それゆえに戦争の帰趨すら変わり得ることを鮮明に示す例として、今回のウクライナの戦争の右に出るものはない。

 SNSと現代の紛争の交点を論じた『#LikeWar(邦題:「いいね!」戦争)』の共著者、ピーター・シンガー氏は、「(ソーシャルメディアと戦争の関係は)2次的な問題だと考えている人は、21世紀の戦争や政治に注意を払っていない」と話す。

 オンラインでのおしゃべりが世論の急激な変化を促すことがある。すでにある考え方が補強される時は特にそうだ。

 SNSへの投稿は、一般のメディアにとっても公開情報を収集・分析する手法「オシント」にとっても、欠かすことのできない情報源になっている。

 SNSは戦争目的の達成を目指す政府の「手段」として利用できると指摘するのは、ミハイロ・フョードロフ氏。

 グローバルなハイテク企業によるロシアの「デジタル封鎖」を要求するためにツイッターを使ったウクライナのデジタル担当大臣だ。

 米ホワイトハウスは北大西洋条約機構(NATO)を鼓舞したりウクライナに武器を提供したりする一方で、先日、30人の若いTikTokインフルエンサーを集め、戦争についての説明会を開催した。

 政治活動団体「Gen-Z for Change(改革を目指すZ世代)」から参加したビクトリア・ハメットさんは、「好むと好まざるとにかかわらず、こうしたアプリには人が大勢いる」と話している。

ネット普及国が戦場になった時

 これらのアプリにはウクライナの戦争の情報が満ちあふれている。「新しいのはその規模だ」とシンガー氏は指摘する。

 戦争の恐ろしさは、当然ながら人の関心を引く。

 欧州の人々は特に興味をかき立てられている。地理的に近いうえに、彼らもまたウラジーミル・プーチン大統領を恐れているからだ。

 人種や心理も影響している可能性がある。

 西欧の人々はシリア人よりもウクライナ人に共感を抱きやすく、それゆえウクライナ関連の投稿を視聴・共有したり、「いいね!」ボタンを押したりしやすいのかもしれない。